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mc1397

2023年06月21日

モノ申すオジサン物語

モノ申すオジサン物語パート1
「逆命利君」

 今回から、軽ちゃあ通信に新たなライターが登場します。どこにでもいるような方ですが、定年退職し、年金暮らしの自由人です。現役時は仕事に没頭し、地域のことにはとんと無関心でしたが、ほとんどの時間を地域で過ごすようになると、いろいろと気になることが出てきます。なぜかなという疑問から、行政に関心が出てきました。以後、行政との絡みがスタートします。

 市役所に出入りする人は、様々な用件を持っている。普通の市民は、それぞれの窓口で用を済ませ帰途に着く。弁当を持って市役所で一日過ごす市民はいないと思うが、近年の庁舎は市民開放されているので、特に暑い夏場は時間を過ごすにはもってこいの場所になっている。また、市のほうでも、ロシアによるウクライナ侵攻や原油・ガス不足に伴う電気料金やガス代の高騰のため、自宅のエアコンを節約する高齢者などの方に快適な公共施設でしのぐよう呼び掛けてもいる。
 いろいろな目的を持って、様々な人が庁舎に来るが、市に対し不平・不満がある人は、時間に関係なく来庁し「要求貫徹」を目指して頑張る。
 ここで紹介する「モノ申すオジサン」(略してモノジー)も市役所の常連であるが、一風変わっている。ちょっと見にはヤーサン風の角刈りで、年齢は60代後半から70代前半、正体がはっきりしないだけにちょっと不気味な一面がある。
 利益誘導型とは違った新しいタイプで、個人的要求をするわけでもない。非常勤職員みたいに時々自転車(レクサスやベンツでないので正直、職員はホッとしている)でやってきて、いきなり窓口に現れる。

「何でテキパキやれんのか」
 「オッス!」と言うや否や、カウンターの椅子に腰かけ、半日位しゃべりこんでいく。ムゲに断ると何をされるか分からないので、指名された課長氏は身の不運を呪いながら、言質を取られないように言葉を選び、できるだけ仕事の方向に話がいかないよう、ドラゴンズとか大谷などの話題に終始するよう誘導する。
 「ところでなあ。どうもハタから役所を見ているとイライラするんだ。やってることがまだるっこしいと言うか、かったるいと言うか、何でもっとテキパキできんのかと思っとる。今、こんな本を読んでいるんだ」とモノジーは、バッグから「逆命利君」(佐高信著 講談社文庫)を取り出した。

イエスイエスじゃイカン
 課長氏は、モノジーの真意がつかみ切れず、追い返すこともできないので、やんわりと「最初に申し上げておきますが、お時間は30分とさせていただきます。それから、乱暴な発言はご遠慮ください。場合によっては、録音したり、ビデオ撮影をさせていただきます・・・市の方針ですので、よろしくお願い・・・」と言ったところで、モノジーは「分かった、分かった。あんたらは不当要求のことを言っとるんだろ。そんなことはせーへんから、まあ話を聞きなはれ。30分しかおまえんのやろ」と、本について話し始めた。
 「この本の中に、こう書いてある。『命(めい)に従いて君を利する、之(これ)を順と為し、命に従いて君を病ましむる、之を諛(ゆ)と為し、命に逆らいて君を利する、之を忠と謂(い)い、命に逆らいて君を病ましむる、之を乱と謂う。逆命利君(ぎゃくめいりくん)は命に逆らいて君を利する、之を忠と謂う、を略した言葉である。何でもイエス・サーのイエスマンでは意味がない。命に逆らわざるを得ない場合には、逆らっても、あえて正しいと思うことを言う。このことは、立場を変えれば、部下から忠言を受けたら、きちんと傾聴しなければいけないということを意味している。(略)下から上にものが言えず、何でもイエス、イエスじゃ、コミュニケーションがダメになり、風通しが悪くなる』つまりなあ、イエスマンばかりじゃイカンということだ。このワシみたいに言いにくいことを言う奴が組織には必要というこっちゃ。まあ、アンタにこうせい言う気はないけれど、暇な時に読んだらどうだ」とモノジーは本をカウンターに置いたが、課長氏は丁寧に、そろそろお時間も参りましたので、貴重なお話をありがとうございました。本は検討しまして、必要なら、人事のほうで調整させていただきます。」と公務員一流の口舌で締めくくった。さすが課長氏であるが、モノジーはまだ言い足りなさそうな顔つきで、「コーシー行こか。一日中お前さんが職場に居たら、部下は仕事がやりにくくてしようがないだろう。たまにはお茶でも飲んで世間の風に当たってはどうか」とのたまうが、(余計なお世話だと思いながら)課長氏は「お誘いのお気持ちはありがたく頂戴しますが、職務専念義務や管理監督責任、市民対応など・・・」お断りの言葉がどんどん出てくる。モノジーは、さすが管理職は訓練をきちんと受け取るなと変に感心しつつ、「お邪魔虫は、これにて退散するわ。また来るでよ」
 今後、モノジーが行政にどう関わるのか、乞うご期待を。

注) ここで紹介した文庫本(逆命利君)は1993年に発行されたもので、現在ではすでに絶版となっているかも知れません。どうしても読みたいという方は無駄になるかも知れませんが、ひょっとして図書館に収蔵されている可能性はあります。なんせ30年前の本ですから。
  

Posted by mc1397 at 10:56Comments(0)TrackBack(0)