QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。 解除は→こちら
現在の読者数 0人
プロフィール
mc1397

2023年10月29日

雑談の広場

雑談の広場その11
女の「老い」と「妖」を考える
 これはある60代の夫婦の話です。定年退職した夫は、老後を悠々自適に過ごそうと考え、特に仕事をするわけでもなく、日々自宅でテレビを観たり、好きな小説を読んだり、時には妻の買い物に付き合ったりして暮らしています。
 ある日、夫の一言から、これまで夫に従い、影響を受けていた妻が立場を逆転させ、夫に影響を与えるようになった。
 夫婦には一人娘がいて、夫の定年間際に嫁ぐことになり、娘の門出を祝うことで人生の一仕事を終え、安堵しつつも夫婦だけが取り残されたような空虚感を感じていた。
ある日、夫から「髪が薄くなったね。やはり年かな」と言われ、妻はハッとした。妻は、50代になった頃から、若く見られたい、老いをできるだけ止めたいとの一心で、高価な化粧品を買ったり、美容院でさりげなく髪をカラーにしたり、服装も若く見られるよう努力していただけに、夫の一言で自身の老いを自覚することになった。化粧は以前より派手目になり、服装も流行のものを求めるようになった。指摘された髪の薄さは育毛剤やウィッグを使うようになり、鏡台にはドモホルンクリームや口紅など若返りの化粧品が並んでいる。そんな妻の変化を知ってか知らないのか、夫は妻の若作りを単純に喜んでいた。
しかし、妻の内面は満たされていない。夫の一言で内心ではモヤモヤしている。妻の日課として、坂道の散歩がある。自身の健康のため50代から続けている。ある日、坂道を下っているとき、坂道を上がってくる若い女性とすれちがった。彼女はその女性を見てハッと気付いた。一人呟いた。「今の女性は若い頃の自分だったのか」。過去と現在が行き交うかのような錯覚に陥った。
老いは、当人自身よりも周囲にいる人たちに明確に映るようだ。だから他人から指摘されるのだ。よく言われるように、男性の老いは目、歯、マラの順で体に変化が生じるとか。では女性はどうか。ある専門家は「老いへの抵抗は若さと美と性への妖しい執念」と指摘する。
彼女にとって、老いは「妖」として現れた。普通の夫婦は「共に白髪まで」長生きしようと暮らすものだが、彼女の場合、夫の一言が「共に白髪」という老いのイメージから外れて、夫と距離を置くようになった。
夫は妻の変化に気付き、妻と話し合って、原因の一端が自分の不用意な一言であることを知り、今まで妻を従属的に扱っていたことを詫びた。最近では、妻の散歩に付き添うようになり、妻の変化のきっかけになった坂道では手をつないで歩くようにした。
長年、付き添った夫婦でも、お互い分かり合えないことがあるが、やはり「共白髪」的なイメージで支え合って暮らしていくことが肝要なんでしょうね。


この記事へのトラックバックURL