こじつけ先生の処世術高座その3
独裁者は『はだかの王様』
「はだかの王様」という童話は皆さん、ご存知のことと思います。昨年の2月以降のロシアによるウクライナ侵攻の動きを見ていると、この童話を思い起こします。
この童話の面白さは、人々への暗示です。
二人の仕立て屋は
・頭の悪い人には見えない。
・欲の深い人には見えない。
・心の冷たい人には見えない。
と言って、人々に暗示をかけます。王様も大臣もお付きの人も、そして民衆も、自分が「頭が悪く、欲が深く、心が冷たい」と思われたくないために。見えないものを見えたといいますが、純粋な子どもの心は正直です。真実には勝てません。
真実を見つめる
激動のウクライナ情勢を見るとき、忘れてはいけないものがかつての東欧の動向です。1990年代以前の東欧を見ると、長年の人権抑圧、経済統制による物不足、慢性的な物価上昇、累積対外債務の増大など、誰もがこのままではいけないと思いつつも、それを一度口に出したり、行動しようものなら、処刑されるかもしれないのだから、民衆は黙々と耐え、独裁者の言いなりになっていました。
独裁者は「はだかの王様」、そして真実から目をそらせていたことに気付いたとき、ペレストロイカや民族独立などの改革が始まり、ベルリンの壁の崩壊、ソ連邦崩壊、民族国家への独立が急速に進みました。このときの民衆の目の輝きが未来を明るく照らすものと期待されていました。改革の前に、マスコミのインタビューに「ダメ、ダメ」と応じようとしなかった人々が、改革後はわんさと寄ってきて一斉に口を開き、話しかける姿を見て、あの暗い自我を押し殺したような表情はどこにも見当たらず、したたかに生活する民衆の力に驚きを感じたものでした。
ところがその一方で、旧ソ連邦の復活、巨大なロシア連邦を目指す萌芽が生まれていました。ウラジーミル・プーチンの登場です。KGB出身の恐るべき人物がその後、政界に進出し、副大統領を経て、大統領に上りつめたのです。ロシア国内において、独裁者の地位を確立したのです。情報統制と政治的行動への圧政で、民衆はまたしても「頭が悪く、欲が深く、心が冷たい」と思われたくないために、見るべき真実から目をそむけ、独裁者に国家の未来を託したのです。
独裁は心に住む
「はだかの王様」はどの社会にも存在します。その存在を許すのは、人々が真実から目をそらせたときです。例えば、企業の社長が独裁的になるのも、周りの人たちがキチンと物を言わなかったり、社長が気に入る情報しか伝えなかったりしたときでしょう。
みんなに支持されて選ばれた長であっても、取り巻きの口の良いことばかりを受け入れたり、視野を広く持たなかったりすると、コツコツ働く人が自分を支えていることを忘れがちになります。
誰もが独裁を目指そうと思ってなるものではなく、独裁はその人の心が狭く冷たくなったとき、その人の心に住むものです。
いかなる社会であっても、「人を大切にする」という姿勢が重要ではないでしょうか。
本日の高座は、これにて終了です。また、お会いしましょう。バイバイピー