雑談の広場その18
演歌の花道
少し人生に疲れた中高年諸氏へ
日曜日の夜9時、BSテレ東「演歌の花道」という番組が放送されている。昭和から平成にかけて放送されたものの再放送ものだ。アナログ放送当時、これを観るサラリーマンは多かった。当時は日曜日の夜10時からであった。これが金曜日や土曜日であってはいけない。明日からまた一週間が始まるなぁ、明日はあんな仕事があるなぁと頭の中でモゾモゾする日曜日の夜だからこそ、少し人生に疲れが出始めた中高年サラリーマンに受けたのだろう。
茶の間でグラスを傾けて、お父ちゃんは「演歌の花道」にチャンネルを合わせた。「演歌の花道」は来宮良子のどこか突き放したような独特の語りから始まった。これがホントにクサイせりふだった。
浮世舞台の 花道は
表もあれば 裏もある
花と咲く身に 歌あれば
咲かぬ花にも 歌ひとつ
人は流れて どこへ行く
ゆれる想いのかがり火は
思い出染める 恋かがり
水にきらめく 灯りさえ
なぜか身にしむ 心歌
お酒飲んだら 思い出す
夜の片隅 裏通り
あの歌聞こえる 思い出酒が
心の底まで しみじみと
なぜか身にしむ 心歌
とても言えといわれて言えるようなセリフじゃない。来宮は人生の辛さ、せつなさを低く太い声で押し出すように語った。これを聞きたいがためにチャンネルを合わせるファンも多かった。
酒、女、恋、不倫、涙、いじめ・・・妻も娘も息子も上司も部下もオレのことを分かっちゃくれない。中高年お父ちゃんは家族から冷たい目を向けられても、30分だけTVを独占したのだ。
現在、BSで30数年前の、当時の歌手を収録したそのものが再放送(おそらく何度も)され、若かりし頃の姿を見せてくれる。中高年諸氏はこれを観ながら、頭の中はタイムスリップしていることだろう。ささやかな幸せが嬉しいと思う。